ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
口に出してからあれこれ気になって、お腹の前で組んだ手をソワソワ動かしてしまう。
瀬戸山はしばらくきょとんとしたように目を瞬かせた後、微かに口角を上げて笑った。
「つまり、俺が帰ると寂しい――と」
その不敵な笑みに、頬がかぁっと熱を持つ。
「私、ひと言もそんなこと言ってないですけど……!」
「いいよ。いてやる。今日はとことんワガママを聞く約束だし」
「ですから、別に自分の願望から引き留めたわけではなく、こんな雨の夜遅くにお帰しするのは忍びないなーって、ただそれだけで……!」
「シャワー、借りていいか? 前の男の服があればそれも貸してくれ」
全然聞いてないし……! 前の男の服とか言ってサラッと傷口抉らないでよね……!
ぷりぷりしながら彼を睨むも、ネクタイの結び目を緩める仕草にドキッとしてすぐ目を逸らす羽目になる。
瀬戸山統、やっぱり嫌いだ……!
心の中で盛大に叫びつつ、彼のための服やタオルを用意するのだった。