ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
彼に返すべき借りが増えてしまい、思わずがくっとうなだれる。
その時、皿の下に一枚のメモが挟まっているのに気づいた。
【よく寝てたから代わりに朝飯作っておいた。また会いに来る】
そんなメッセージの下に、彼の電話番号であろう数字が並んでいた。
「会いに来るって……」
いったい、なんのために?
胸の内で問いかけながら、習字の先生のように整った彼の字を指先で撫でる。
お礼の電話くらいした方がいいのだろうか。でも、改めて会おうとか言われたら困ってしまう。
瀬戸山には感謝をしているものの、特定の男性と深く関わる勇気が今は持てない。
彼が決して悪い人じゃないのはなんとなく理解したが、遠くからその存在を励みにするくらいがちょうどいい。ライバルってそういうものでしょ?
うん、と自分を納得させるように頷き、メモはいったんカウンターに戻した。
おにぎりに合う緑茶を淹れようとキッチンの方へ回ると、コンロには味噌汁が入った小鍋まであった。
至れり尽くせりでありがたい反面、してやられた、という気分になる。
温めてから味を見たらとても優しい家庭的な味で、二日酔いの胃にじんわりと染みた。