ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「……美味しい」
冷蔵庫には昨夜の残り物があったはずなのに、イタリアンじゃ二日酔いの私には重いとでも思ったのかな。
気遣いも料理の味も完璧で、もはや悔しい気持ちも湧かない。
こんなにもお世話になってしまったのだから、せめて彼が望んでいたように早く立ち直ろう。
いっぱい食べて、寝て、これまで以上に仕事を頑張って。美吉ブロッサムをますます成長させるのが、私の務めだ。
週明けの月曜日、私はすっきりとした心持ちで美吉ブロッサム本社に出勤した。
以前は自宅マンションと同じ文京区に借りていた本社のオフィスを、先月表参道に移転したばかり。
家賃は高いけれど、払えないほどではない。お洒落に敏感な街のイメージが美吉ブロッサムの花の価値をより高めてくれると信じて、移転に踏み切った。
社員数は四十名ほどなのでほど広くはないオフィスだが、インテリアに観葉植物を多用しているのがこだわりだ。
そんな緑あふれるオフィスのミーティングルームで、朝から私を含め四名の役員たちと円卓を囲んでいた。