ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「具体的に、どこをどうリスケすれば休んでも平気な状況になるのかを提示してもらえませんと、なんとも言えませんね」
左木くんは表情を変えずにそう言った。冷たい反応にも見えるが、これが彼の通常運転だ。
「あ、そうだよね。せっかく作ってきたのに共有してなくてごめん」
慌てて手元のタブレットを操作し、美吉ブロッサムの年間経営計画、そして私たち役員全体のスケジュールを更新したカレンダーをアプリで共有する。
個人個人のスケジュールはまた別で調整してもらわなければならないけれど、全体計画に余裕を持たせたからなんとかなるはずだ。
「延期する企画は美吉ブロッサム単体でやるもののみですね。これなら、関係各所への連絡も必要最小限で済みそう」
ホッとしたように笑顔になったのは、マーケティング責任者の右原さん。
外ハネのミディアムヘアにいつでも流行を押さえたメイクやネイル、欠かさずスカートを履くなどとにかく女子力が高い。
私とカンナに次ぐ会社の重役である彼女と左木くんは、彼らの名字と掛けて右大臣・左大臣などと社内で呼ばれている。
ふたりは実を言うと私の大学時代の後輩で、私も所属していた園芸愛好会のメンバーだった。