ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
彼らは揃って大手企業への就職には興味がなく、自分たちの手でなにかを作りたいと常々言っていた。
そこで、〝儲かる保証はできないけれど〟と前置きしたうえで、美吉ブロッサムの立ち上げメンバーに誘ったのだ。
以前から私の夢を話して聞かせていた幼馴染のカンナもそこに加わり、私が二十四歳の時に皆で共同出資して出来上がったのが今の美吉ブロッサムだ。
まだまだ発展途上とはいえ、ここまでの会社に成長できたのは、ひとえに彼らのおかげ。感謝の気持ちはひと言じゃ言い表せない。
「……なるほど。正直、肩透かし感はありますが、以前の日程ならどこかで徹夜しなければならなかったのは確実だったので、不測の事態が起きる可能性も考えたらこっちの方がいいかもしれません」
ゆっくりスケジュール内容を吟味していた左木くんが顔を上げる。役員全員からの賛同を得られ、私は胸をなでおろした。
「でも、そういう苑香さんこそもっと休んでくださいね。この経営計画の改訂版も、自宅でお休み中に作ったんでしょう?」
右原さんがタブレットを私の方に向けながら言う。図星だったので苦笑した。