ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「ありがとう。でも私は平気だよ。思いついたらやらない方が気持ち悪くって」
「苑香って昔からそうよね。集中すると倒れるまで頑張っちゃうんだから、そばで見張っているこっちは大変」

 軽く皮肉を交えるカンナだけれど、その瞳は優しい。同い年なのに姉のような彼女には、いつも甘えてばかりだ。

「ごめん。苦労をかけてる自覚あります……」
「いいのよ。そのために私がいるんだから」

 ふっと微笑んだカンナには、同性ながら惚れそうになる。

 一生ついて行かせてね、カンナ……。

 自分が会社のトップであるにもかかわらず胸の内でそう呟き、彼女に両手を合わせた。


 スケジュールに余裕を持たせたとはいえ忙しい毎日を過ごし、週末の金曜になるとカンナと飲みに出かけた。

 落ち着いた和風居酒屋のカウンターで乾杯し、お互いに一週間の疲れを労う。

「ねえ苑香」
「うん?」
「こないだの誕生日、なんかあったでしょ」

 カンナの鋭い指摘にドキッとして、飲んでいたビールが気管に入る。

 盛大にむせた私は、おしぼりを口元にあてつつ彼女を上目遣いで見つめた。

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