ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「こちらこそ、来てくださってありがとうございます。私、あの店の雰囲気が大好きなの。仕事で使わせていただく花材は他社さんと契約しているのだけれど、趣味で花を生ける時にお世話になっているわ。それで、マネジメント会社の方にお願いして招待状を送らせてもらったんです」
思っていた以上の好感触に、心の中で小さくガッツポーズする。矢代先生は、私たちの会社が仕入れる花を本当に愛してくれているようだ。
仕事用の花材は他社に依頼しているという話だが、うまくやれば広告への協力だけでなく、美吉ブロッサムの重要な取引先にもなるかもしれない。
「大変光栄です。仕事柄花は毎日のように眺めておりますが、先生の作品として生まれ変わると、新たな命を吹き込まれたようで花たちもうれしそうに見えます」
「よかった。お花屋さんにそう言ってもらえるとうれしいです」
「とくに私は八重桜の作品が――」
頭の中で練りに練っていた作品の感想を述べようとしたその時、濃紺のスリーピーススーツ姿の男性がぬっと現れた。
……このスーツ、さっきもどこかで見たような。
思わず視線を上げて、ぎょっとする。
せ、瀬戸山統……。