ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
フラれた直後は傷ついて泣いたりもしたけれど、それほど引きずってはいない。
その理由はたぶん、遼太くんとの破局の後、意外な人物に慰められたから……。
脳裏にぼんやり浮かんだのは、瀬戸山統の顔だ。
なにもなかったとはいえ、朝まで彼と同じベッドで寝ていたなんて。今考えると大胆なことをしてしまったと思う。
「実は……あの日、瀬戸山統と一緒にいたの」
「えっ? 瀬戸山園の御曹司の?」
カンナの目が丸くなる。花屋業界において、彼は超がつくほど有名人なのだ。
「うん。彼も矢代先生の内覧会に来てたから、遼太くんとの電話で泣いてたところを偶然見られちゃって。どういうわけか慰めてくれて、私のマンションに一緒に行くことに……」
「マンションって……もしかして、彼と寝たの?」
私はすぐにかぶりを振った。疑われても仕方がない状況だったけれど、私と瀬戸山の間には本当になにもなかった。
「ううん、まさか。一緒にお酒を飲んでるうちに遅くなっちゃったからうちに泊めたけど、朝にはいなくなってた。恐れ多いけど私のことライバルだと思ってくれてるらしくて、だから励ましてくれたみたい」
それ以外、あの時の彼の行動には説明がつかない。
同じ業界で生きる者同士、恋愛くらいでへこむなよと、瀬戸山なりのエールをくれたのだと解釈している。