ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「よかった。そういうことなら納得」
「納得?」
「苑香が遊ばれたんじゃないかと心配だったの。だって彼、九条百貨店のご令嬢と政略結婚が決まっているらしいわよ。瀬戸山園にも花を卸している業者さんに聞いたの」
政略結婚……そう、なんだ。
彼にはそんな気配をまったく感じなかったから、驚くとともに少し複雑な気持ちになる。
それが本当なら、いくらなにもしないからって、ひとり暮らしの女性の家に上がり込むなんて軽率な行動を取ったらダメじゃない。
もしも私が勘違いしてその気になっていたら、どうしていたんだろう。都合よく遊んで捨てるつもりだったのだろうか。
勝手に想像を膨らませているうちに、腹が立ってくる。また会いに来るだなんて、婚約者がいる身分でよく言えたものだ。
「あんな男に遊ばれてたまるもんですか。瀬戸山園のことだって、いつか追い抜いてやるんだから」
「いいわね、それでこそ苑香」
「というわけで、これからも頼りにしてます。カンナ様」
「了解よ、ボス」
頼もしい笑みを返してくれるカンナと、もう一度グラスを合わせて乾杯する。
それからは終始楽しいおしゃべりに興じて、私たちは週末の夜を満喫した。