ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「父親が勝手に決めた許嫁だ。俺自身は興味も関心もない」
「たとえそうだとしても、お仕事上そうもいっていられないのでは? ……政略結婚って聞きました」
私には想像もつかない世界だが、瀬戸山園の御曹司として生まれたからには、感情だけで動くわけにもいかないのではないだろうか。
「そこまでわかっているなら話は早い。俺はその政略結婚を蹴って、きみと一緒になりたいと思っている」
「そうですか、私と……って、えっ!?」
なにを言っているのだろうこの男は。怪訝な目で彼を見つめるが、本人はまったく動じずに私を見据えている。
「そのことも含めて落ち着いて話がしたいから、中に入れてくれないか? 土産もあるし」
瀬戸山が手に提げていた紙袋を掲げる。
お土産まで持参してきた彼を無下に追い返すわけにもいかず、私は戸惑いながらも「どうぞ」と彼をリビングダイニングへ促した。
先ほどから同じテレビ番組をつけているせいか、画面には先ほども見た遼太くんのCMが再び流れ始める。
瀬戸山も気が付いたようで、ジッとテレビを見つめたかと思うと、ローテーブルに置いてあったリモコンでいきなりスイッチを切ってしまった。