ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
これから話をするのに音が煩わしかったのかな……。
あまり気に留めずキッチンでお茶の準備を始めると、横にきた瀬戸山が紙袋から箱を取り出す。
「レアチーズケーキ、苦手じゃなかったか?」
「大丈夫です。お気遣いいただいてすみません」
「よかった。俺は甘いのがあまり得意じゃないから、これくらいがちょうどよくて」
瀬戸山はそう言いながら、我が物顔で食器棚を物色し始める。
もしかしてそうかもと思っていたけど、やっぱり甘いものが苦手なんだ。
じゃあ、この間生クリームのケーキを一緒に食べてくれたのは、かなり無理していたんじゃ……? なんのためにそこまで?
ケーキを箱から出す瀬戸山の横顔を眺め無言で問いかけていると、沸騰を知らせるやかんの甲高い音が響く。
気を取り直してふたり分の紅茶を淹れ、前回と同じようにカウンターでティータイムにした。
瀬戸山が買ってきてくれたレアチーズケーキの上には、食べられる花、エディブルフラワーがデコレーションされて華やかだ。
思わず写真を撮りたくなったものの、撮ったところで誰に見せるのよ、と自分にツッコミを入れる。
瀬戸山と一緒に食べたケーキの写真なんて、親友のカンナにすら見せられない。また妙な心配かけてしまうだけだ。