ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「政略結婚の話だけど、相手の情報も知ってるのか?」
「は、はい。九条百貨店のご令嬢だと……」
「まったく、そういう話はどこから漏れるんだろうな」
瀬戸山が軽く眉根を寄せ、苦笑する。
その反応を見る限り、カンナの情報は間違っていなかったらしい。
「さっきも言ったが彼女とのことは父が勝手に持ってきた縁談なんだ。彼女、蘭子さんというんだが、まだ大学を出たての年で、俺には子どもにしか見えない。彼女と結婚なんてあり得ないよ」
「二十二歳……か。ちょっとジェネレーションギャップはあるかもしれませんね」
恋愛感情があればまた違うのかもしれないけれど、ふたりは政略結婚。
一緒に生活していくうえで、年齢と気持ちの両方にギャップがあるのは不安要素だろう。
「それに、九条百貨店と太いパイプができたところで、瀬戸山園としてそれほどのメリットがあるとも思えないんだ。今は小売業より、大規模な造園、ホテルや商業施設のディスプレイに力を入れていて、利益もそちらに由来するものが多い。むしろ、九条百貨店の経営状況の方が心配なくらいなんだ。そんな政略結婚に、魅力を感じるはずがないだろ?」