ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
九条百貨店との太いパイプ……小売業メインの美吉ブロッサムなら喉から手が出るほど欲しいものだけれど、瀬戸山園の方向性とは合わないらしい。
「だから、俺はきみが欲しい」
そんな言葉と共に、瀬戸山からジッと視線を注がれる。
彼が結婚に乗り気でない理由はなんとなく伝わった。とはいえ話をまとめるには少々早すぎませんか……?
「い、今の〝だから〟の前に、色々説明すべきことがあると思うんですけど……」
「説明? 苑香と結婚したい理由か?」
「そ、そうです……」
改めて聞くのも恥ずかしいものがあるが、こくこくと頷く。
瀬戸山は整った顔を柔らかく緩めると、軽く折り曲げた人差し指で私の頬をすりっと撫でた。
突然触れられて心臓が止まりそうになる。
「初めて会った時から気になる存在だったけど……再会して、苑香のいろんな顔を見ているうちに、俺のものにしたいって独占欲が湧いた。さっきはもう関係ないはずの元恋人に嫉妬してイラついたしな」
形のいい眉を歪め、彼が自嘲する。
さっきって……もしかして、CMに映っていた遼太くんのこと?