ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「だからテレビを消したんですか……?」
「そうだよ。アイツがあんな風に苑香を抱きしめたこともあったのかと思ったら許せなかった。危うくテレビを壊すところだ」
最後の発言は冗談だと思うけど、そんな風に嫉妬されたと知って、動揺せずにはいられなかった。
相変わらず頬を撫でている指先にもいちいちドキドキしてしまって、胸が苦しい。
でも、私はこういう感情の起伏に振り回されず、仕事に集中したいのだ。一生とまでは言わないが、しばらく誰とも恋愛するつもりはない。
「お気持ちはありがたいですが、私ではご期待に沿えません。今はどなたともお付き合いする気はないので……すみません」
彼の手をそっとどけ、その目をジッと見つめる。彼もまた私を見つめ返してきて、膠着状態となる。
「そうやって、理屈で押さえられたら誰も苦労しない。俺は必ずきみの心を動かしてみせる」
仕事ができる彼のことだから、勝ち目のない勝負からはすぐに手を引くような気がしていた。なのに一向にあきらめる気配がなくて、少し慌ててしまう。