ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「な、なにをされても私の気持ちは変わりません」
「ふうん。なにをされても、ね。じゃあ――」

 瀬戸山の顔が急に接近してきて、咄嗟にあっ……と思う。

 けれど、次の瞬間にはもう唇を奪われていた。

 やわらかく吸いつくような唇の感触に、かぁっと全身が熱くなる。体の奥で太鼓を鳴らされているかのように高鳴る鼓動がうるさい。

 唇を噛んでやりたいと思ったけれど、体が言うことを聞かなかった。

 触れ合っている場所が、ただ熱い。

「……真っ赤」

 唇を離した瞬間に彼が漏らした声が甘くて、からかっているというより、かわいいと言う意味に聞こえてしまう。

 自分でも赤くなっている自覚があったから、いたたまれずに目を逸らした。

「こんなことされたら、誰だってそうなります……っ」
「こんなことって?」
「だから、その、キ……」

 至近距離で瞳を覗かれながら、キスだなんて単語を口にするのは無理だ。

 押し黙って下を向いたその時、自分の左手に見覚えのないダイヤの指輪が輝いているのを見つけて狼狽える。

 一カラットはあろうかという大粒のダイヤに、思わず目眩がした。

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