ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 な、なにこれ……。キスの最中につけられたの? 全然気づかなかった……。

「苑香の指に合うように作ったものだ。返品は受け付けない」
「ちょ、ちょっと待ってください。私、あなたから指輪を贈ってもらう理由なんてありません……!」
「きみになくても、俺にはある。言っただろ、独占欲が湧いたって」

 指輪が嵌まっている左手をそっと掴み、その指先に瀬戸山が唇を寄せる。

 キスされる寸前でパッと手を引いた私は、素早く指輪をはずして彼の前に差し出した。

「受け取れません、こんな高価な指輪……」
「だったらもう少しグレードを落とせばいいのか?」
「そういう意味じゃありません……!」

 ムキになって声を上げた私を、瀬戸山は余裕たっぷりにクスクス笑う。

「わかってる、冗談だ。俺だって、大切にしたいと思っている女性に安っぽい指輪なんか送りたくない」

 さりげない発言だったけれど、ドキッとした。

 大切にしたいと思っている……? 私を?

 いやいや、絆されてはダメだ。なにをされても私の気持ちは変わらないと、さっき宣言したばかりではないか。

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