ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
心の中で盛大な独り言を繰り広げていると、指輪を握っている私の手を瀬戸山がギュッと包み込むように握った。
目線を上げると、彼の真剣な眼差しと視線が絡む。
「もし、どうしてもその指輪を返したいと言うなら、今度一日俺に付き合ってくれ。ふたりきりで一日デートをして、それでも苑香の心が動かなかったら、俺の負け。こうやってきみに構うのも終わりにする」
デ、デート……?
正直、こうして彼と少しの時間を共にしているだけでも心をかき乱されて仕方がないのに、ふたりきりで一日過ごすなんて……。
「黙ってるということは、勝つ自信がないのか?」
挑発するような物言いと共にふっと鼻で笑われ、負けず嫌いな私の心に火がつく。
そこまで言うならやってやろうじゃない……。
よく考えたら、デートを一回したくらいで簡単に恋に落ちるわけがない。
私の気持ちさえしっかりしていれば、瀬戸山と会うのはその日が最後。
そしていつの日か、仕事で彼を追い抜いてぎゃふんと言わせてやるのだ。