ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「受けて立ちます、その挑戦」
彼を見つめ、ハッキリ宣言する。瀬戸山はニッと口角を上げると、ジーンズのポケットを探ってスマホを取り出した。
「じゃ、さっさと日程を決めてしまおう。苑香が休めそうな日は?」
「ちょ、ちょっと待ってください……」
慌ててカウンターに置いていたスマホを手に取る。これから月末に向けて忙しくなるので、六月になってからの方がよさそうだ。
「六月の二週目なら、土曜か日曜に時間が取れるかと」
「わかった。じゃ、俺も土曜を空けておく。マンションまで迎えに来るから逃げるなよ?」
挑発するような彼の態度にムッとする。私がそんな卑怯者に見えるのだろうか。
「逃げませんよ……」
「どうかな。苑香が逃げたら俺の勝ちという条件も追加しておくか」
「だから逃げませんって!」
「ムキになるなよ。とりあえず連絡先を教えてくれ」
私が怒れば怒るほど、瀬戸山はなぜか楽しそうに笑う。
ますます腹が立つと同時に、こんな人と恋に落ちるわけがないと妙な自信がついた。