ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
バラ園で抱く葛藤
瀬戸山との約束を控えた前夜、お風呂上がりにサンルームの植物たちを愛でながらもらいもののワインに口をつけていると、リビングの方でスマホが鳴った。
「はいはーい」
ほろ酔い気分だったけれど、仕事の電話かもしれないのでぺちぺち頬を叩きながらリビングへ移動する。
ローテーブルに置いていたスマホを手に取ると、ドキッと心臓が跳ねた。
瀬戸山だ……。
落ち着かない気持ちをごまかすようにソファに腰を下ろし、通話をタップする。
「もしもし……?」
『俺。今いいか?』
スマホに名前が出ているとはいえ、当然のごとく『俺』で通じると思っているところが憎たらしい。
私は最近心の中に飼い始めた瀬戸山の等身大人形を一発殴ってから、返事をする。
「はい、大丈夫です」
『明日は十時ごろ車で迎えに行く。それまでに支度して』
「あの、明日はどこへ行くんですか? 目的地によって服装も変わるので」
『別に普段着で構わない。行き先はバラ園だからな』
「バラ園……」
それを聞いてパッと気持ちが明るくなった。