ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
バラの花はちょうど初夏の今が見頃だ。花屋で見るバラも美しいけれど、よく手入れされた庭園に咲き乱れる生きた花にはかなわない。
忙しい毎日の中では自然の中を歩く機会も少ないし、いい気分転換になりそうだ。
……って、別に楽しみにしているわけじゃないけどね!
『明日は園内に色々なマルシェも出店しているらしい。ゆっくり見て回るのもいいかもな』
瀬戸山がのんびりした口調で説明する。
これじゃ、なんだか普通のデートをするみたいだ。
「……あの」
『ん?』
「約束、忘れてないですよね? 明日私の気持ちが変わらなければ、指輪をお返しして他人に戻るって」
このままなし崩し的に丸め込まれてしまうのだけは避けたい。
私だってもちろん流されるつもりはないけれど、瀬戸山の強引さや、時々垣間見せる男性的な色気を前に毅然とした態度を取り続けられるのか、少し不安なのだ。
『もちろんわかってる。ただ……』
「ただ?」
『俺は負けるつもりはない。必ず、きみの心を手に入れる』
電話越しでもわかる、強い決意の滲んだ声。不覚にもドキッとしてしまい、焦りに似た気持ちが胸に広がる。
いったいどこからそんな自信が湧いてくるの? そして、どうしてそこまで私に執着するの?