ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ありがとう。今回の展示のために、瀬戸山園さんがいつも以上に見事な花材を提供してくださったお陰です。どうぞこれからもよろしくね」
今回のいけばな展を含め、先生の作品に使われている花材は瀬戸山園が用意したものだったんだ……。
瀬戸山園という会社に、そして瀬戸山統自身にも強い信頼を抱いているのであろう先生の言葉に、私の胸は強くかき乱された。
「もちろんお任せください。つきましては先生、瀬戸山園との大々的なコラボレーションにはご興味ありませんか? これから瀬戸山園で推し進める『くらしの中に和の花を』という企画の広告に、先生の生け花をぜひ使わせていただきたくて」
ちょっと、待ってよ……。思わず口を挟みたくなるが、声が出ない。
矢代先生が返事をする前にパッと目を輝かせたのが見て取れたため、言えなかった。
今日の先生との交渉に並々ならぬ気合いを入れていたのは確かだが、強引な営業をするのは性に合わない。
花というのは押し売りをするものではないと、祖父母から言い聞かされて育ったから……。
「ぜひ、詳しいお話を聞きたいわ」
「ありがとうございます。こちらがサンプルの動画です」