ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
自分がペーパードライバーであるせいか、手慣れた彼の運転操作は頼もしく、武骨な男っぽさも感じてドキドキしてしまう。
気を逸らすように、流れていたFMラジオに耳を傾けた。
ポップなメロディの後、天気予報が始まる。
『今日の関東地方、午前中は穏やかな晴れ間が広がりますが、午後になると天気が急変します。内陸を中心に急な豪雨の恐れがありますので、お出かけの際はご注意ください』
「えっ。急な豪雨……」
「苑香、もしかして雨女か?」
「なんで私のせいにするんですか。瀬戸山さんこそ雨男なのでは?」
ムキになったら少しガラガラ声が出てしまい、慌てて咳払いする。
瀬戸山は気にする素振りもなく、ハンドルを握って前方を見据えたままだ。
「それはない。大事な予定がある日はたいてい晴れるんだ。日頃の行いもいいしな」
「へぇ~……勝手に指輪を用意する人が」
日頃の行いがいいなんて、よく言えたものだ。
「俺は誰かさんと違って、自分の気持ちに素直だし欲望に忠実なんだよ」
「なんですかそれ。まるで私があまのじゃくみたいに……」
「違うのか?」
「全然違います……! 今日のデートだって、素直に考えて〝気が進まないなぁ〟って思ったんですから」