ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 プイと顔を背け、窓から外を眺める。午後から豪雨というわりに日差しは眩しく、気持ちのいい青空が広がっている。

 心の中はなぜか、モヤモヤと曇っているけれど。

「……そう。それは悪かったな」

 からかうような話し方をやめ、控えめな声で呟く瀬戸山。

 いつもの憎たらしい軽口が飛んでくると思っていただけに、調子が狂う。

 でも、私は間違っていないはず……。

 彼に気を持たせないことこそが今日の目的なんだから、冷たくするくらいでちょうどいいのだ。

 自分を正当化するように言い聞かせながら、それでも瀬戸山が今どんな顔をしているのかを見る勇気はなかった。


 都心から離れて東京の西部へ向かうにつれ、高いビルは減って景色が開けてきた。
 
 住宅街を抜けて緑の多い景色が続いた後、目的地の公園に到着する。
 
 広々とした駐車場に車を止め、彼の先導で園内へ。チケットは当然のように彼がふたり分購入してくれた。

「バラ園は少し歩いた場所にあるそうだ」
「広い公園なんですね。ツツジ園と、熱帯植物の温室もある」

 瀬戸山が開いている園内マップを覗き込み、思わずワクワクした。

 マルシェがあるとは聞いていたが、今私たちが歩いている通路の両脇にはいくつかキッチンカーも出ていて、家族連れやカップルでにぎわっている。

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