ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「なにか欲しいものあるか?」
瀬戸山がそう言って私を見下ろす。
「まだお腹は空いてないので大丈夫です」
「じゃあ、飲み物だけ買おうか。俺はコーヒーにするけど苑香は?」
「えっと、私は……」
すぐそばには自動販売機もあったけれど、一段と行列ができているキッチンカーが気になった。
車のそばではためくノボリには【バラ色スムージー】と書いてある。本物のバラの花びらを使っているのが売りのようだ。
「私、あのスムージーが飲みたいので並んできます。バラを使っているんですって」
「ああ……あのピンク色のか。わかった。俺が並ぶから苑香はどこか座ってて」
「えっ? いいです。あの店にコーヒーはなさそうですし、別々で」
「気にするな。俺もスムージーが飲みたくなった」
ホントに……? コーヒーとは全然違う飲み物ですけど。
瀬戸山は私の疑いの眼差しを軽く受け流し、颯爽と行列の最後尾に並んだ。列の前にいた若い女性ふたりが、彼の顔を見て頬を赤らめる。
あぁ……わかる。顔だけはいいものね、瀬戸山って。