ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
いったい私はなんの話を聞かされているのだろう。
段々いら立ちが沸いててきて、『マッチングアプリがうまくいかないのは、決して職業のせいではないと思いますけど』と本音をぶちまける自分を想像してしまう。
……しかし、この人が本当にマスコミ関係者なら自ら心証を悪くするのは避けたい。
【急成長の美吉ブロッサムに暗雲!? 高飛車女社長の弱者男性見下し発言】
などと週刊誌にでも書かれたら、営業妨害もいいところだ。
別にこの人が週刊誌の記者かどうかは知らないし、下世話な見出しも妄想でしかないけれど。
「すみません。私はそういったアプリを使ったことがないのでお役に立てそうになくて」
「いやー、ちょっと若者の感性で見てくんねぇかな。俺のプロフィールのどこが悪いのか」
人の話、聞いてないし……っ。
抑えているイライラがイライライライラくらいに成長し、全身全霊で『知るかーーっ!』と叫び出したい衝動にかられたその瞬間だった。
突然視界に影がかかったと思ったら、瀬戸山が広い背中で私を庇うように立っていた。
「――失礼。彼女になにか用ですか?」
「あ、いや、その……」
私の位置からは男性の表情が見えないが、口調が急にしどろもどろになった。
連れがいると知っていて私を引き留めていたのは自分のくせに、今さらなにを慌てているんだろう。