ハルサメレオンの春

時折、新郎新婦

 




 -愛を誓う日に愛を誓えない若者は、未来ではなく過去にエゴを見るのであろうか。-



 「新郎新婦の入場です」


 高らかな声と共に、お決まりのメロディーで白装束を纏った男女が教会に入場をした。

 歩みは緩やかに、笑みとという仮面と共に。

 周囲は盛大な拍手で出迎えた。

 涙ぐむものもいた。大きく笑い出すものもいた。

 一種のハプニングかというくらいの、喜怒哀楽の合算であった。


 「兄さん、おめでとう」


 彼に兄貴などいなかった。

 それも仮面であった。


 「カット!」


 カチンコの合図と共に、周囲の活気は一斉に静まった。

 お疲れ様、と共に。

 水分補給をしながら、各々が解散をしていく。


 「春雨(はるさめ)さん、いいですか」

 彼はマネージャーである男性に声をかけられる。

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