ハルサメレオンの春



 俺はそこそこ売れているタレントだ。

 今の時期、たった15でのスキャンダルだなんてどこにも致命傷にはならないのかもしれない。だから相手の女優もこんな事をしてくるのだろう。

 だけど、俺はそこら辺のタレントとは訳が違う。



 「あ、ママが言ってた」



 ゆりあは今度は紅茶の入ったティーカップを手に、口出した。



 「娘の腹いせは親に来るから勘弁して、って」



 そう言うと、ススーッと紅茶を口に流していく。

 その言葉が俺には痛かった。グサッグサッと頭や背に刺さっていく。

 …子の腹いせ。そのままだ。俺の両親は共に芸能人で、ゆりあの母も女優業をしている。わかったフリをしてもフリなんかじゃなく、底を突いてくる。
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