ハルサメレオンの春
とは言うものの。
「ゆりあ」
「レオも欲しかったの?」
「…?」
「アイス」
ああ、さっきの、と脳裏に浮かんだのは同時に、『愛す』。ダサいダジャレだった。
「いや、いる。いや、いらない」
「どっちよ」
愛のない許嫁と婚約とは如何なものなのだろうか。
彼女に嫉妬という概念は存在しないのではないか。俺が言いたかったのは、「婚約者としての本意」だ。
「さっきの」
でも彼女は。
ほら、とゆりあが手を伸ばす。「私が欲しい」のは、【人気アイドルと人気女優のツーショット写真】らしい。
俺もしようがなく、写真を共有する。
可愛い女の子に目の無いゆりあは、俺への態度とは打って変わり過ぎていた。