ハルサメレオンの春
●感情のない、
「カット!」
学業を優先したい俺に、広告の仕事が無理矢理入れ込まれた。
やるなら放課後、または土日祝休みに。なのに、お昼休憩を待たずに学校を退散させられていた。何やら相手側の女優の都合らしい。
「春雨さん、ミスもなくて、すごいですね」
「いえ」
2つ上のマドカさんは、小さな顔から零れそうな瞳をしていた。けれどそれなりにストイックな生活をしているのか、メイク直しが多い様にも感じた。
舞台の仕事も相まって、ここ半年間休みが無いらしい。…というメイクさんの噂話だった。
俺はこの仕事ひとつの為に、黒髪を明るい茶色にされていた。茶色といっても、グレーに近い色合いである。