ハルサメレオンの春

●疑似恋愛、




 ドラマ撮影は順調に進んでいた。

 1ヶ月間、学校と撮影の往復だった。その合間に番宣でテレビのバラエティ番組の収録をするなど、仕事をこなしていた。



 とあるバラエティ番組での収録中の出来事であった。

 「春雨さんとミューさんは、本当のカップルのように仲良いって噂を耳にしたんですけど、本当なんですか?」

 男性タレントさんがニコニコ笑顔で質問をしてきた。



 「あはは、そう言われると困っちゃうんですけど、よくお話しますよ」

 ミューがにこやかなアイドルスマイルで返した。俺はというと、同じく笑顔で返した。



 ミューとのやり取りは突っ込まれたくない程に、順調であった。



 「ねえ、さっきの態度は何?もっとバカップル差を見せつけちゃえばいいんだよ、ミューとの仲を」



 まるで脚で壁ドンをしているかの様な態度で、それでもっていじけた口調で楽屋に押し掛けてきた。
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