ハルサメレオンの春
 俺はついニヤついてしまった。

 それでもゆりあは食い下がらなくて、



 「ママにでも頼もうかしら。レオ頼りにならないんだもの」



 突拍子もないことを言い出した。

 …どうしても会いたいらしい。



 「はあ、わかった」

 「え?」

 「ゆりあ、良く聞いて」



 きょとん、と顔を上げて首を傾げる様は、ミューにもマドカさんにも匹敵しない可愛さが溢れ出していた。

 俺から見えるゆりあは小型犬のポメラニアンとチワワを併せた毛並みの良いひ弱な女の子。

 それを逆手に取れる俺様気取りの俺は、ゆりあの天敵かもしれない。



 「俺と、ゲームをしよう」



 右手をゆりあの後頭部へ回し、サラサラで艶やかな髪をすくった。

 だけれど、雪女かの様な冷たいさざ波が俺を襲った。
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