ハルサメレオンの春



 サムシングブルーの封筒とホワイトカラーの便箋は「交際」の先をいっている。

 それをわかっていながらの言いつけなのか。戦略なのか。

 あの"ゆりあ"と長年幼馴染をしてきたのも、お遊びで済ませてもらえなくなってしまった。



 …ゆりあは可愛い。

 可愛らしいではなく、可愛いんだ。
 だから、俺の手に入れてはいけない。そう思ってきた。


 遠くで眺めていたい。


 そんな捻じ曲がった感情が、俺の中をがんじがらめにしていた。



 「レオン様、表情が崩れていますよ」

 リエがポツリと俺の心を露骨に突いてきた。マリはホロリと白いハンカチで涙を拭っていた。



 ゆりあが俺の手の内に………!!

 思わずガッツポーズをしたくなったが、左拳を軽く握っただけだった。



 わかっていた、この日が来ることを。

 中々動き出さない俺たちを大人の誘導によって流されていいのかと、説いている自分もいる。


 少しの動揺と、少しの躊躇。

 恋を知らない俺に、こんな大役ができるのだろうか。
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