ハルサメレオンの春

⚫︎初の、




 春休み明け。ゆりあと2人での登校が始ま…るのかと思った。

 が、送りの車はいつもの4人セットでだった。

 半ば緊張して念入りにヘアセットをした俺がバカバカしい。



 「あ、あのぅ」

 先ほどからクネクネとしながら様子を伺っているのがわかる。この黒髪ボブ頭の、メイは顔を頻繁に隠してはチラホラと視線を追いやっている。

 「なに?」どうした、とメイに笑顔を向けてみるが内心冷や汗でしかない。



 「あの文通、来ましたか?」

 「ああ…メイのとこにも?」

 「やっぱり!!いつでもあたし達仲間ですね!」



 諸々と意味不明なところはさておき、メイのところにも来たらしいそのお便りは。…ゆりあも。



 「私は」

 不貞腐れた様な顔を向けてきたが、すぐにそっぽを向いた。
 ゆりあはそんな仕草も可愛かった。



 栗色の長い髪が揺れる。本当は触れたいのか何なのか。この感情に名前があるかなんて何もわからなくて。


 俺は、恋を知らない。
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