君の隠しているモノ
私は女子校育ちでまだ恋を知らない。
テレビに出るアイドルの男の子とか俳優さんとかはかっこいいなぁと思いながらも友人たち見たく沼らほどでもない。
大学に入ったらお金も持てるしそうして推しが見つかればファンクラブに入ったりライブに行ったりするだろうけどそこまででもなく。

大学も女子校だから、男の人と出会うってなると教授と学生会館の事務員、電車の中にいる人たち。

んー、ピンとこない。何でだろう。

アルバイトもよりによって女性社員しかいないパン屋さん選んでしまった。でもレジと併設のカフェでコーヒーを出すからそこで出会いがある、かな。

だけど駅近だからみんなセカセカして。常連さんいるけど大抵左手薬指に指輪が。

同級生の恵美見たく不倫なんてしてまで恋愛はしたくない。

そんな環境の中で私がときめいてしまった人がようやく現れた。
「ちわっす、チャグマ宅配便です」

宅配員のお兄さんだ。
まさか業者の人にときめくなんてね。

どこにでもいる配達員。他の業者の配達員さんもいるけどベテランのおじさんが多いかな。

そんな中で背が高くてサラッとして小顔の配達員のお兄さんにときめいてしまった。
これが好き、トキメキ、ということなのかな。突然それを知ってしまった私はドキドキが止まらなくなった。

ああ、友人が推し活に課金するのも恵美が不倫するのもこのドキドキがあってこそなのかな。

ようやく知ってしまったこの感情……と言いたいところだったがやはりイケメンな彼は他の職場の人から人気があって誰が荷物を受け取るかで揉めていた。(揉めるとか言い方もあれだけど……)

私は何気なく受け取っていたけど、意識するようになってから受け取るのが緊張してきた。

見上げると笑顔ではないけど真面目、な。ちゃんと挨拶もできるし。社会人はやっぱり違うよなぁ。
年齢はいくつなんだろ。正社員だから私よりも年上かな。そんなことを想像ばかりしちゃう。
でもお客さんや他の業者の人、電車の中の人……その人たちと同じで彼もその中の1人であって深くを知ることなんてないだろう、て思っていた矢先だった。
< 1 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop