【改稿版】あなたと紡ぐ、永遠の愛は奇跡でした。
■欲望に満ちた瞬間。
なのにそこに大きくて深い溝ができそうな気がして、なんだか悲しい気持ちになってしまう。
もちろん課長が私を裏切ることはないって信じてるし、ずっとそばにいてくれるって信じてる。
だからこそ、不安になってしまう。
* * *
「今日の会議はこれにて終了です。 皆さん、お疲れ様でした」
会議が終わると、課長は何かの資料をジーッと眺めていた。
「課長」
「はい」
「会議、終わりました」
「お疲れ様です。 どうでしたか?会議は」
課長にそう聞かれ「はい。とりあえず、案はまとまりました」と答えた。
「そうですか」
「ですがまだ開発途中の段階ですので、ハッキリとしたことはまだ言えないですね」
「そうですか。 ではまとまりましたら、こちらに報告してください。 それから静っ……藤堂さんにも、報告をお願いします」
「……はい」
課長の口から藤堂さんの名前が出るだけで、モヤモヤしてしまう。
「ではそのまま、企画の方も進めてください」
「はい」
自分のデスクに戻ると、資料を広げてパソコンを開く。
「ねぇ、瑞紀」
「ん? なに?」
沙織は私に「あの藤堂って人、課長の元奥さんなんでしょ?」と私に問いかけてくる。
「えっ、なんで知ってるの?」
私がそう聞くと、沙織は「実はね、たまたま聞いちゃったのよ」と私に話した。
「……聞いたって、なにを?」
「課長と藤堂って人が前に会議室で話してるとこ見ちゃったのよ、私」
「え?」
「なんの話してるんだろうと思って、気になって覗いたらね、課長があの女に俺とお前は今は仕事上の関係でしかないんだ。もう元には戻れないって、そう言ってたの」