【改稿版】あなたと紡ぐ、永遠の愛は奇跡でした。
* * *



 私は呼吸を整えてから、常務のいる部屋のドアをノックした。

「どうぞ」

 私は「失礼します」と中に入る。

「ああ、君か。待っていたよ」

 常務は私が来ることをわかっていたかのような顔をしていた。

「……常務、お返事に来ました。 遅くなってすみません」

「いや、構わないよ。こちらこそ、急かしてるみたいで申し訳ないね」

「……いえ」

 常務は立っている私に「まあ、そんなとこに立ってないでこっちに座りなさい」と席に座るように促す。

「はい。 失礼します」

 私は常務の目の前に座る。

「……ところで佐倉くん」

「はい」

 常務がおもむろに口を開く。

「決心は、ついたかい?」

「……はい」

 私はもう迷ったりしない。

「そうかい。聞かせてくれるかな」

「……私、行きます。アメリカ、行かせてください」

「そうかい。 よく決心してくれたね、佐倉くん」

 私が決心したことで、常務は微笑みを見せる。

「……せっかく頂いたお話です。 断る訳には、いかないじゃないですか」

 常務はそんな私に「でも、佐倉くんはどうして行く気になったんだい? あんなに迷っていたのに」と私を見ている。

「……ある人が、私の背中を押してくれたんです。アメリカに行けって」

「そのある人って……君にとっては大事な人、なのかな?」

 常務にそう聞かれて、私は「……え?」と常務を見た。

「おや、違ったかな?」

 ううん、違くなんかない。 私の背中の押してくれたのは、私の大切な人だから。

「……常務の仰るとおりです。私の大切な人が、背中を押してくれました」
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