【改稿版】あなたと紡ぐ、永遠の愛は奇跡でした。
え……会社を?
「藤堂さんが、お父さんの会社を?」
「ああ。……実は静香の親父さん、三ヶ月前に亡くなったんだ」
「え?亡くなったんですか……?」
「ああ」
亡くなったんだ、藤堂さんのお父さん……。
「それでかもしれないな。アイツ、急に親父さんの会社を継ぐって決めたらしいんだ」
「そうなんですか……?」
「まあアイツにとってはそれが、親父さんに対する最後の親孝行だと思ったんだろうな。 会社を継ぐって言った時は、俺も本当にビックリしたよ」
「……そうだったんですか」
私が知らない間に、そんなことがあったなんて……。ある意味、知らないほうがよかったかな。
そんな私の不安を感じ取ったのか、課長は電話越しに「安心しろ。静香はもう、あの頃の静香じゃないよ」と言っていた。
「え……?」
「アイツは昔に比べて随分変わったような気がするよ。 それにアイツ、今付き合ってる人がいるみたいだしな」
「えっ、そうなんですか?」
あの藤堂さんに、恋人が……。
「あれ以来俺にも言い寄ったりはしなくなったし、何より幸せそうなんだ。……だからきっと、これでよかったんだと思う」
「そうですか。 藤堂さんが幸せなら、私も嬉しいです」
私の言葉に課長は「え?嬉しい?」と聞き返してくる。
「藤堂さんも同じ女性ですから。……幸せなんだと思うと、私も嬉しくなります」
「そうか。やっぱりお前は優しいな」
え? 私、優しい……のかな?
「静香のこと、許したんだろ?」
「あ……あれは別に、許した訳じゃありません。 ただ、静香さんと話をして和解をしただけの話です」
「そうか。でも許したのと同じだろ?」
「そうなのでしょうか?」
「そうだろ。……じゃあ俺はそろそろ寝るよ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
そして静かに電話が切れた。