【改訂版】いらくさの家
第22話
時は、8月26日の朝8時55分頃であった。

場所は、下妻にある工場の従業員さんたちの休憩室にて…

若い従業員さんたちは、朝礼の時間が近いのに休憩室でのんだくれになっていた。

テーブルの上には、コンビニで購入した日本酒・ショーチュー・ウイスキー・ビール・マッコリなどのアルコール類と激辛のスナック菓子がたくさん並んでいた。

この前日、若い従業員さんたちは主任の男性から9月いっぱいで下妻の工場が閉鎖されるので、茨城県《けんない》にある他の工場か千葉県の別の工場のどちらかに配置転換になることを聞いた。

だから、従業員さんたちの怒りが爆発するおそれが出た。

若い従業員さんたちは、よりしれつな怒りに震えながら言うた。

「もうがまんならん!!」
「ああ!!そうだな!!」
「親会社の経営陣《クソジジイ》どもは許さない!!」
「ああ!!もちろんだ!!」
「経営陣《クソジジイ》どもは、何ヵ所の工場を潰すつもりだ!!」
「ああ!!許さない!!」

この時、若い従業員さんたちが摂取したアルコールの量が許容範囲を大きく超えたようだ。

超えていたので、職場に対する不満を次々とぶち曲げた。

そこへ、遅れて入ってきた若い男性従業員さんが血相を変えてやって来た。

右手には、昨日付けの日刊ゲンダイ(タブロイド夕刊)を持っていた。

「おいみんな!!大変だ!!」
「どうした!?」
「ゆうべの(日刊)ゲンダイに工場が閉鎖されることが決まった原因が書かれていたぞ!!」
「なんだって!!」
「その原因は、親会社の社長夫婦にあったのだ!!カイシャのカネを横領《ドロボー》してシフクをこやしていた!!その上に新たな事実が出た!!」
「新たな事実?」
「とにかく2面を見ろよ!!」

若い従業員さんたちは、指定されたページをめくった。

すると…

親会社の社長がやくざのナンバーツーの男の横で、ロレックス(高級腕時計)を持って、ほこらしげにしている写真が載っていた。

それを見た若い従業員さんたちの怒りが増幅した。

さらに紙面をめくると、よりショーゲキ的な写真が見えた。

社長夫人が軽井沢のゴルフ場で親分の夫人と茨城県警《けんけい》の本部の捜査一課長《いちかちょう》の妻とゴルフウェア姿でニヤニヤした表情で写っていた写真…

社長夫婦の女子大生のひとり娘がラメラメ衣装で六本木のディスコのお立ち台でド派手に踊っていた写真…

さらにその上にショーゲキ的な写真が載っていた…

それを見た、従業員さんたちは1000億倍の力を込めて激怒した。

許さない!!

親会社の連中は、下請けを食い物にした…

こうなったら…

戦争だ!!

若い従業員さんたちは、一斉にガラスのタンブラーを手に取ったあと中に入っているどぎつい酒を一気にのみほしたあとタンブラーを叩き割った。

(ガチャーン!!)

その後、右手で作ったこぶしをあげながら一斉にさけんだ。

「オレたち下請けの従業員さんたちをグロウした親会社をぶっ潰すぞ!!」
「オーッ!!」
「親会社の社長夫婦の家族をぶっ殺すぞ!!」
「オーッ!!」
「親会社の従業員《クソバカ》どもをぶっ殺すぞ!!」
「オーッ!!」
「おれたちの力で、会社を守るぞ!!」
「エイエイオー!!」

このあと、従業員さんたちはより過激な行動に出た。

8月27日頃であった。

この日、工場の配送業務が停止した。

それにより、商品の配送ができなくなった。

親会社で大パニックが発生した。

困り果てた主任は、従業員さんたちに対してストライキをやめてくれなだめた。

騒ぎがおさまり業務が再開されたが、配送遅延などの大きな影響が残った。

その翌日であった。

従業員さんたちが再びストライキを起したので、また業務が止まった。

従業員さんたちは、このあとより過激な行動に踏み切ったようだ。
< 22 / 24 >

この作品をシェア

pagetop