年の差十四の主さま~家を追い出されたら、最凶と呼ばれる魔法使いさまのお世話係になりました~
「ユスターシュさま。朝ですよ」

 少しボリュームを上げて、そう声をかける。でも、相変わらずというべきか。もぞもぞと動きはするものの、起きる気配がない。

(今度はフライパンとお玉でも持ってこようかしら?)

 そう思うが、キッチンまで取りに行くのは少し面倒だ。

 それに、そんな時間があるのならばここでユスターシュさまと格闘しているほうがずっといい。

 力任せに毛布をはぎ取ろうとする。けど、無理。まぁ、これくらいで起きるとは予想していない。これで起きたら、その日はラッキーだと思うほどだもの。

「ユスターシュさま!」

 今度はさらに声のボリュームを上げて、彼のことを呼ぶ。

 もぞもぞと動いた。その動きは少し大きくなっているだろうか。よし、きちんと意識は戻ってきている。

「起きてください。朝食が冷めてしまいますよ!」

 ……朝食など作っていない。いつもいつも、このお人を起こしてから作るのだ。

 だってこのお人、とにかく朝に弱くて準備にも時間がかかるのだもの。

「うぅ、アルティエン……? あと五年……」

 彼がそう言って毛布にもう一度くるまろうとする。その隙を狙って、私は毛布をはぎ取った。

「あと五年って、あなたアラフォーになる気ですか!?」

 このお人、見た目は若々しいけれど、御年三十四歳。私よりも十四歳も年上。しかし、全く威厳がない。

「それはそれでいいかもねぇ。……僕は、別にそれでも……」

 いやいやいや! よくない! 全然よくない!

 そういう意味を込めて、私は伸びてきた手から毛布を逃がそうとして……うっかり、自分の手首を掴まれてしまった。

 気が付いたときには、もう遅い。あっという間に私はユスターシュさまに引き寄せられて、彼の胸にダイブする。
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