天使ちゃんの片想い。



 結論から言うとニナは、天使でありながら人間に恋をしました。

 天界にある図書室、人様模様を管理されているファイルは、人様の死と共に本へと移り変わります。でないと、ただの事務室となってしまいます。

 ニナはそんな未完成である本に、魅了をされてしまったわけです。
 ニナは冷気だと感じていますが、それはニナにとって恋を覚ます最後の魔薬だったのではないでしょうか。

 そしてとうとう、天使様に黙って一人人間界へ降り立ってしまうわけです。-


 -今度はウル側の視点から見てみましょう。

 転校してきた当初、興味はなかったものの、ニナのしつこさに不思議と口数が増え出します。
 「天見って、不思議だよね」という台詞から、何か他の人とは違うものを悟り始めたのではないでしょうか。

 余談ですが「俺、本当はこの学校に来るんじゃなかったんだ」から、ニナへの人様からの喝がある様にも思えませんか。

 「誰にも見えないところで、本当に一人にされそうになったんだ」「俺、一人が嫌いなんだよ」「一人が嫌いなのに、一人になりたい」と続け様にあるウルの台詞から、ウルは心に孤独を抱えていることがわかります。
 しかしながら兄弟が5人もいると述べた上なので、とても複雑な家庭状況なことが見えてきます。-

 合間の「なんでここにいるの?」のニナの口走った台詞は、もしかしたら天界から見下ろしている天使様のお告げだったのかもしれません。

 そして「我慢の限界がきたら、どうしよう」のウルの台詞から、ニナの人間界での生活のタイムリミッターとなっています。
 現に、ニナは夕方に偶然に消えていたものが、現れる時間も遅まって行っています。一日の滞在時間が短くなっているのです。

 「何色もの大きな花たちに、人々は魅力された。言葉なんていらなかった。ただその色形に目をやって、時間を過ごした。」
 …周囲(世間)の人達にとってウルは、鮮やかで大きな花の様な存在だったのではないでしょうか。見た目だけで判断をされ、中身(言葉)の判断もいらない程に。時間が過ぎて行くことも、ウルは人間界において、重要な役割にいた身であったと捉えると自然になります。

 最後のページ、
 「まただね、天見。俺を見つけるのが上手い」から、ニナの本来の姿(天使の姿)を見たウルは驚かなかったため、いつも空を見上げていたウルにとって、願っていた届け物だったのかもしれません。

 しかしながら、ニナはやつれ、ウルもその姿(天使であること)を認めようとしません。

 ウルの最後の台詞とともに、ニナは消えてしまいます。
 大きな羽でウルを包み込み、それでも現実を見ないかの様な発言は、二人の白昼夢だったのかもしれません。

 現実から逃避したい二人にとって、とっておきの二人だったのかもしれませんね。

 けれども、ニナにとっての天界の掟破りは重罪です。ウルにとっての、冷たい風(希死念慮)も、人間界においての重罪だったのでしょう。

 こうして二人は、どちらの世界からも引き裂かれてしまったのです。




 儚くも悲しいお話、いかがだったでしょうか。





 -END-


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