恋愛契約〜社内イチの地味子が元ヤンエリート係長に溺愛にされる〜
一週間ほど経ったある日、彼女は最近引き継いだ仕事を先輩事務員の津田に尋ねようとした時だった。
その先輩は、杏樹に案の定素っ気ない態度を見せた。しかし、それだけでは留まらず、彼女が質問すると、「知らない」、「分からない」しか言わなかった。
それでも彼女は業務に差し支えると思い尋ねたが、すぐに後悔した。
「それってさ、私だけが知ってるわけじゃないんだから、他の人にも聞いたら?私忙しいんだけど」
「すみません」
杏樹は謝罪することしかできなかった。
普段優しい津田に突き放されるように言われてしまい、彼女は手の震えを必死で抑えた。
その様子を見た猿田はニヤニヤ笑い、長田はさっと席を外した。
他の営業や事務員に尋ねようとしても、誰も教えてはくれず、杏樹は一人で分からないなりに考えながら仕事を進めた。