恋愛契約〜社内イチの地味子が元ヤンエリート係長に溺愛にされる〜
「ここ、座って良い?」
杏樹ははっと顔を上げた。
目の前にいたのは、噂の第一営業課の係長、橘岳人だった。
すっと通った鼻に、眼光は鋭くも優しさの帯びた瞳で、背が格段に高いわけではないが、すらっとしてスタイルが良い。
「ど、どうぞ」
「ありがとう」
橘は礼を言うと持っていた唐揚げ定食を机に置き、着席して食べ始めた。
二人はそれから特に話すこともなく、ただ黙々と食べ続けた。
杏樹にとって救いだったのは、橘が座っているおかげで猿田たちの様子が見えないことだった。