涙の流星
若かりし頃のあなた
夏海は、良子から麦ごはん、焼き魚、みそ汁、卵焼きといったごはんをもらった。
「ごめんなさいね。今、食糧不足でとても厳しくて。」
「ぜんぜん。大丈夫です。」
鈴の音のようなきれいな声の良子さんは、優しく微笑んだ。
こんな見ず知らずの中学の体操服、彼らからしたら変わった格好した私を親切にしてくれた。
夏海から見たら過去の祖母は、とても美人で鈴の音のようなきれいな声の持ち主だった。
過去の祖父は、爽やかな好青年という感じの今でいうイケメンだ。
祖母から幼馴染で祖父から告白されたと聞いてたが、今は、言わないと夏海は決めた。
言ったら過去を変えてしまい、自分が生まれない可能性が高いからだ。
「夏海ちゃんってどこから来たの?ずいぶん見かけない子だけど」
「えっと、信じてもらえるか・・・わからなくて」
「山のふもとで倒れてたんだ。もしかしたら、空襲から逃げてきて家族と離れたかもしれない。」
「そうなの。辛かったわね。よかったらウチにおいてあげるわよ。今、うち、人手不足だから。」
<実は、未来から来ました。>と正直に話そうとした時、健次郎がかぶせるように「山のふもとで倒れてた」と
良子に話した。
夏海は、涙が出そうになった。問い詰めたりしない優しさに
嬉しくなり、その上、家においてくれるというのだ。
困った人放っておけない祖母の性格は、もしかしたらこの時からかもしれない。
「いいんですか?こんな見ず知らずの私を置いても」
「いいのよ。夏海ちゃん、かわいいし、きっと看板娘になれるわよ。衣食住は、必ず守るわよ」
「夏海、そうしてもらった方がいいぞ。俺も良子もお前のこと怪しいとイチミリも思ってない。
だから、安心してここで暮らしなさい」
優しく微笑んだ良子さんと健次郎さんの言葉に甘えて、夏海は、良子の定食屋に住まわせてもらうことにした。
「じゃあ、良子。俺は、訓練に戻る。そろそろ鬼軍曹がお怒りだろうから。
夏海、また様子を見に会いに来るからな。」
「健次郎さん、気を付けてね。」
「健次郎さん、ありがとうございました。」
健次郎は、空襲に備えて訓練に戻った。戻る際、優しく手を振ってくれた。
夏海は、若かりし頃の祖父に思わず恋をしそうになった。
祖母が祖父を好きになった理由が今、わかった気がしたからだ。
「じゃあこの服に着替えてね。この時間は、お客さん少ないから着替え終わったら一緒にお掃除を手伝ってちょうだい。」
「わかりました。」
良子に用意された服に着替えて、良子と玄関前を掃除した。
「健次郎さんってどこの部隊に入ってるんですか?」
「陸よ。毎日銃の訓練や1か月山にこもることもあるみたい。訓練中に命落とすことあるから
いつも心配。」
「陸・・・」
夏海は、祖父の健次郎は、日本陸軍に入ってたことがあると聞いたこともある。
あの服装を見て確か階級は、上等兵だ。祖父が入ってた軍隊は、とにかく厳しいと聞いたことがある。
「夏海ちゃんの住んでたところってどんなところだったの?」
「小さいころは、海の近くに住んでました。」
「海!?私、海は、見たことないの。どんな感じだった?」
良子は、目をキラキラさせて、夏海に聞いた。海を見たことがない
それを聞いた夏海は、笑顔で海について教えた。
「とってもキラキラしてて、海の生き物たちもとても素敵だった。海月もイルカもいたよ。」
「イルカ?よくとって食べてたりしたの?」
「え?いやイルカは、大事な生き物なのでとって食べたりしませんでしたよ。海月は、食用でとって
食べたりしますけど。」
「そっか。夏海ちゃんが住んでたところの人たちはとても優しい人たちだったのね。海の生き物大事にするなんて」
良子は、優しい笑みを浮かべた。「優しい」だなんて久しぶりに言われて嬉しかった。一度も疑いもしない
優しい眼差しで良子は言った。
「私、いつか海に行きたいなぁ。健次郎さんと夏海ちゃんと3人で行って、貝殻とったりして遊んだりしたい」
「私も一緒に行っていいんですか?良子さんと健次郎さん、幼馴染でしょ?邪魔ですよ。私がいたら」
「あら。私も健次郎さんもあなたを気に入ってるのよ。大事な友人だときっと健次郎さんも思ってるはずよ。」
良子は、お上品な笑顔を浮かべ、夏海を大事な友人と言ってくれた。こんないい人を私は、未来からきたのに
戦争で逃げてきたと嘘ついて本当に申し訳ないと夏海は深く思った。
「さぁ。夕飯時は、お客さん多いわよ。頑張りましょ。」
夏海を引っ張って、店に戻った。
夕方に良子の両親に挨拶をした。
「そんなわけで夏海ちゃんをしばらく家で預かってもいいかしら?」
夏海は、父と母に事情を話す良子の背中を見つめた。
良子の父、夏海から見ればひいじいさんとひいばあさんになるわけだ。生まれて初めて会う。
そして、良子の父は、口を開いた。
「よし。わかった。こんなかわいらしい娘さんを野垂れ死にさせるわけにいかん。店を手伝ってくれるというなら
ありがたい。夏海さんといったね。帰れる場所が見つかるまでここにいなさい。」
「良子から話は伺っております。良子は、夏海ちゃんのようなかわいらしいお友達ができて喜んでるの。
私は、もう一人娘ができたみたいでとっても嬉しいわ。」
なんと二人ともあっさり許可してくれた。
写真で見たとき、とても厳しそうだったひいじいちゃんこと飯田義信さんとひいばあちゃんこと飯田由利は
想像以上に優しかった。
「あなたたちから見たら私は、未来のひ孫です。」と夏海は、言いたかったが、言ったら言ったで信じてくれるとは思わないので
言わないでいた。
良子は、とても喜んで私の両手を握って「よかったわね。夏海ちゃん!私、姉妹ができたみたいで嬉しいわ」とはしゃいでいた。
おばあちゃんが改めてかわいいと思った夏海だった。
夕餉刻、夏海は、飯田家が用意してくれた夕飯をしっかり味わって食べていた。
この時代は、食糧不足でお腹いっぱい食べることが厳しいからだ。
「夏海ちゃん、よく噛んで食べるなんてお行儀がいいのね」
由利は、感心していた。
「良子から話は聞いてる。空襲で逃げ回ってきて、辛かっただろう。ここは、食料は、まぁまぁよく入る。
安心してお腹いっぱい食べなさい。」
義信は、優しい笑顔で言ってくれた。
まさかひいじいちゃんとひいばあちゃんとこうやって会話交わす日が来るなんて夏海は、夢にも思わなかった。
「ありがとうございます。よく噛んで食べなさいって両親がよく言ってたので。」
「夏海ちゃん育ちがいいのね。お父さん、あなた早食いなんですから、夏海ちゃんを見習ってちょうだい」
「わかってる。癖はなかなか抜けなくてな」
この時代に来て祖父母と曾祖父母の癖がよくわかってきた気がする。と思った夏海だった。
良子とお風呂に入り、夏海は、寝る前に秘密の会話をした。
「あの・・良子さん」
「なぁに?夏海ちゃん」
「信じてもらえるかどうかわからないけど。ずっと良子さんに嘘つくの申し訳ないから正直に言うね」
「うん。大丈夫よ」
夏海は、深呼吸した。深く、深く。
「実は、私、令和という未来の時代から来たの。良子さんから見て私は、あなたの未来の孫にあたるの」
夏海は、全部打ち明けた。良子は、驚いた顔した。
そして、良子は言った。それは、意外な言葉だった。
「ちょっとだけわかってたよ。」
「え?」
「初めて夏海ちゃんの顔見たとき、そうじゃないんだなってわかったの。健次郎さんもきっと気づいてるはず。
言わないのは、夏海ちゃんなりの優しい気遣いなのよね。」
「未来が変わるかもしれないって怖くて」
「大丈夫よ。正直言ってくれてありがとう。嬉しいわ。私の未来の子孫とこうやってお話してるなんて。
このことは、お父さんお母さんには内緒にしてあげる。」
良子の勘の鋭さと優しさに夏海は泣いた。
「でも健次郎さん鈍いところあるからなぁ。もしかしたら気づいてないかも。あの時、会話かぶせたのは、
夏海ちゃんが戦争で怖い思いしたから気遣っただけかもしれないわね。
今は、二人だけの秘密にしてあげる。」
夏海は、良子に抱きしめられて泣いた。
「ごめんなさいね。今、食糧不足でとても厳しくて。」
「ぜんぜん。大丈夫です。」
鈴の音のようなきれいな声の良子さんは、優しく微笑んだ。
こんな見ず知らずの中学の体操服、彼らからしたら変わった格好した私を親切にしてくれた。
夏海から見たら過去の祖母は、とても美人で鈴の音のようなきれいな声の持ち主だった。
過去の祖父は、爽やかな好青年という感じの今でいうイケメンだ。
祖母から幼馴染で祖父から告白されたと聞いてたが、今は、言わないと夏海は決めた。
言ったら過去を変えてしまい、自分が生まれない可能性が高いからだ。
「夏海ちゃんってどこから来たの?ずいぶん見かけない子だけど」
「えっと、信じてもらえるか・・・わからなくて」
「山のふもとで倒れてたんだ。もしかしたら、空襲から逃げてきて家族と離れたかもしれない。」
「そうなの。辛かったわね。よかったらウチにおいてあげるわよ。今、うち、人手不足だから。」
<実は、未来から来ました。>と正直に話そうとした時、健次郎がかぶせるように「山のふもとで倒れてた」と
良子に話した。
夏海は、涙が出そうになった。問い詰めたりしない優しさに
嬉しくなり、その上、家においてくれるというのだ。
困った人放っておけない祖母の性格は、もしかしたらこの時からかもしれない。
「いいんですか?こんな見ず知らずの私を置いても」
「いいのよ。夏海ちゃん、かわいいし、きっと看板娘になれるわよ。衣食住は、必ず守るわよ」
「夏海、そうしてもらった方がいいぞ。俺も良子もお前のこと怪しいとイチミリも思ってない。
だから、安心してここで暮らしなさい」
優しく微笑んだ良子さんと健次郎さんの言葉に甘えて、夏海は、良子の定食屋に住まわせてもらうことにした。
「じゃあ、良子。俺は、訓練に戻る。そろそろ鬼軍曹がお怒りだろうから。
夏海、また様子を見に会いに来るからな。」
「健次郎さん、気を付けてね。」
「健次郎さん、ありがとうございました。」
健次郎は、空襲に備えて訓練に戻った。戻る際、優しく手を振ってくれた。
夏海は、若かりし頃の祖父に思わず恋をしそうになった。
祖母が祖父を好きになった理由が今、わかった気がしたからだ。
「じゃあこの服に着替えてね。この時間は、お客さん少ないから着替え終わったら一緒にお掃除を手伝ってちょうだい。」
「わかりました。」
良子に用意された服に着替えて、良子と玄関前を掃除した。
「健次郎さんってどこの部隊に入ってるんですか?」
「陸よ。毎日銃の訓練や1か月山にこもることもあるみたい。訓練中に命落とすことあるから
いつも心配。」
「陸・・・」
夏海は、祖父の健次郎は、日本陸軍に入ってたことがあると聞いたこともある。
あの服装を見て確か階級は、上等兵だ。祖父が入ってた軍隊は、とにかく厳しいと聞いたことがある。
「夏海ちゃんの住んでたところってどんなところだったの?」
「小さいころは、海の近くに住んでました。」
「海!?私、海は、見たことないの。どんな感じだった?」
良子は、目をキラキラさせて、夏海に聞いた。海を見たことがない
それを聞いた夏海は、笑顔で海について教えた。
「とってもキラキラしてて、海の生き物たちもとても素敵だった。海月もイルカもいたよ。」
「イルカ?よくとって食べてたりしたの?」
「え?いやイルカは、大事な生き物なのでとって食べたりしませんでしたよ。海月は、食用でとって
食べたりしますけど。」
「そっか。夏海ちゃんが住んでたところの人たちはとても優しい人たちだったのね。海の生き物大事にするなんて」
良子は、優しい笑みを浮かべた。「優しい」だなんて久しぶりに言われて嬉しかった。一度も疑いもしない
優しい眼差しで良子は言った。
「私、いつか海に行きたいなぁ。健次郎さんと夏海ちゃんと3人で行って、貝殻とったりして遊んだりしたい」
「私も一緒に行っていいんですか?良子さんと健次郎さん、幼馴染でしょ?邪魔ですよ。私がいたら」
「あら。私も健次郎さんもあなたを気に入ってるのよ。大事な友人だときっと健次郎さんも思ってるはずよ。」
良子は、お上品な笑顔を浮かべ、夏海を大事な友人と言ってくれた。こんないい人を私は、未来からきたのに
戦争で逃げてきたと嘘ついて本当に申し訳ないと夏海は深く思った。
「さぁ。夕飯時は、お客さん多いわよ。頑張りましょ。」
夏海を引っ張って、店に戻った。
夕方に良子の両親に挨拶をした。
「そんなわけで夏海ちゃんをしばらく家で預かってもいいかしら?」
夏海は、父と母に事情を話す良子の背中を見つめた。
良子の父、夏海から見ればひいじいさんとひいばあさんになるわけだ。生まれて初めて会う。
そして、良子の父は、口を開いた。
「よし。わかった。こんなかわいらしい娘さんを野垂れ死にさせるわけにいかん。店を手伝ってくれるというなら
ありがたい。夏海さんといったね。帰れる場所が見つかるまでここにいなさい。」
「良子から話は伺っております。良子は、夏海ちゃんのようなかわいらしいお友達ができて喜んでるの。
私は、もう一人娘ができたみたいでとっても嬉しいわ。」
なんと二人ともあっさり許可してくれた。
写真で見たとき、とても厳しそうだったひいじいちゃんこと飯田義信さんとひいばあちゃんこと飯田由利は
想像以上に優しかった。
「あなたたちから見たら私は、未来のひ孫です。」と夏海は、言いたかったが、言ったら言ったで信じてくれるとは思わないので
言わないでいた。
良子は、とても喜んで私の両手を握って「よかったわね。夏海ちゃん!私、姉妹ができたみたいで嬉しいわ」とはしゃいでいた。
おばあちゃんが改めてかわいいと思った夏海だった。
夕餉刻、夏海は、飯田家が用意してくれた夕飯をしっかり味わって食べていた。
この時代は、食糧不足でお腹いっぱい食べることが厳しいからだ。
「夏海ちゃん、よく噛んで食べるなんてお行儀がいいのね」
由利は、感心していた。
「良子から話は聞いてる。空襲で逃げ回ってきて、辛かっただろう。ここは、食料は、まぁまぁよく入る。
安心してお腹いっぱい食べなさい。」
義信は、優しい笑顔で言ってくれた。
まさかひいじいちゃんとひいばあちゃんとこうやって会話交わす日が来るなんて夏海は、夢にも思わなかった。
「ありがとうございます。よく噛んで食べなさいって両親がよく言ってたので。」
「夏海ちゃん育ちがいいのね。お父さん、あなた早食いなんですから、夏海ちゃんを見習ってちょうだい」
「わかってる。癖はなかなか抜けなくてな」
この時代に来て祖父母と曾祖父母の癖がよくわかってきた気がする。と思った夏海だった。
良子とお風呂に入り、夏海は、寝る前に秘密の会話をした。
「あの・・良子さん」
「なぁに?夏海ちゃん」
「信じてもらえるかどうかわからないけど。ずっと良子さんに嘘つくの申し訳ないから正直に言うね」
「うん。大丈夫よ」
夏海は、深呼吸した。深く、深く。
「実は、私、令和という未来の時代から来たの。良子さんから見て私は、あなたの未来の孫にあたるの」
夏海は、全部打ち明けた。良子は、驚いた顔した。
そして、良子は言った。それは、意外な言葉だった。
「ちょっとだけわかってたよ。」
「え?」
「初めて夏海ちゃんの顔見たとき、そうじゃないんだなってわかったの。健次郎さんもきっと気づいてるはず。
言わないのは、夏海ちゃんなりの優しい気遣いなのよね。」
「未来が変わるかもしれないって怖くて」
「大丈夫よ。正直言ってくれてありがとう。嬉しいわ。私の未来の子孫とこうやってお話してるなんて。
このことは、お父さんお母さんには内緒にしてあげる。」
良子の勘の鋭さと優しさに夏海は泣いた。
「でも健次郎さん鈍いところあるからなぁ。もしかしたら気づいてないかも。あの時、会話かぶせたのは、
夏海ちゃんが戦争で怖い思いしたから気遣っただけかもしれないわね。
今は、二人だけの秘密にしてあげる。」
夏海は、良子に抱きしめられて泣いた。