亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~

 他にも、おかしなことがいくつもあった。

 例えば、何故かは全くわからないけれども、夜、レイファスがうなされることが少なくなったのだ。

 そして、おそらくシルフィリアだけが知っていることではないかと思われるのだが、レイファスは疲労し、深い眠りにつくとき、無意識に獣の形を取るらしい。
 今まで、寝ている時はずっと人の姿をしていたから、まさかこのような癖があろうとはシルフィリアも想像だにしなかった。

 ある日ふと、うなされず静かにしていると思ったら、寝台が揺らぎ、隣に大きなふかふかの赤毛の狼が現れたのだ。
 しかも、ゆめうつつに、その立派な真紅のふわふわ尻尾が、機嫌よく揺れている。

 あまりの事態に、しばらくシルフィリアはその様を目を丸くして見つめていた。

 そして、例えば、弟の話だ。

「なんかさ。ご飯が美味しいんだ」

 理由はさっぱりわからないが、弟と従弟の食事の質が上がったらしい。
 意味がわからない。
 そんなことをして、一体何のメリットがあるのだろう。

 なお、シルフィリアは何故か毎日毎食、レイファスの食事に同伴させられており、レイファスとほぼ同じものを食べていた。
 今思えば、格別の取り扱いである。
 一体、なんのつもりなのだろう。

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