亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~
6章 鹿狩り

1 開催前


 鹿狩り。

 それは、狩りを尊ぶ獣人の国で行われる秋の祭りで、森に獲物となる鹿を放ち、専用の弓矢を使った狩りを楽しむ行事である。
 鹿を用意できる王侯貴族の間で主に流行しており、今、世界を席巻する獣人の国であるラグナ王国においても、当然のごとく人気の会であった。

 特に、ラグナ王国の王族は獣の血が強く、野獣の姿に転変することができる。
 その姿で弓を使わずに獲物を狩る様は、見物人も含め、多くの国民を沸かせてきた。

 五年前にある惨劇があったものの、それでもすたれることがないのは、国王ラザックがこの行事を好んでいるからである。

 会場はラグナ王国の名所でもある神樹の森だ。
 毎年行われる行事であるため、森の入口近くには広場が用意されており、日よけのある観客用の座席が広く設けられ、屋台が立ち並ぶ。

 王都から二日かけて馬車で移動するその場所に、シルフィリアは主人であるレイファスに連れられ、向かっている最中であった。

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