亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~


 そうして迎えた鹿狩りの当日は、空が晴れわたり、絶好の散策日和であった。

 たどりついた神樹の森は、想像以上に壮大で、そして人の活気であふれている。
 そこに居る多くの者は獣人だが、他国から来た人族の観客も混ざっているようだ。

 何しろ、本日の鹿狩りの主催者は国王ラザックである。
 国で一番の規模の鹿狩りとなることは間違いがない。
 それに、森に放たれる予定の鹿も、見事な体躯、立派な角を有するものが多く用意されていた。
 見ごたえのある鹿狩りが行われるであろうことは明白で、観客達は活気にあふれた様子で、祭りの開催を待ちわびていた。

 会場の中央には、それぞれの参加者達の獲物を展示する展示場が設けられている。
 各参加者が鹿を狩るたびに、供の者達がその獲物を展示場まで運び、どの参加者の進捗が最もいいか、可視化されるような仕組みとなっているのだ。

 最も多くの鹿を狩った者、最も大きな鹿を狩った者、最初に獲物を狩った者には多額の賞金が与えられるため、参加者達は名誉だけでなく賞金を求めて、真剣に狩りの腕を競う。
 そのため、王侯貴族だけでなく、腕に自信のある冒険者達も多く参加している。

 さらに、ラザックの主催する鹿狩りには、各参加者が最初に狩った鹿は、その場で捌かれ、会場の者達にふるまわれる風習があった。
 しかも、ラザックの用意する鹿は、身が柔らかく味がいい。
 庶民がなかなか口にすることができない高価な鹿料理は、毎年大量の観客を呼び寄せる結果をもたらしていた。


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