亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~
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「ずいぶんと、警戒を解くのが早かったので助かりましたよ」
ダニエルの笑顔が歪んで見えて、シルフィリアはあとずさろうとした。
しかし、片手を彼に、もう片方をデニスに掴まれているので、逃げることはできない。
行きついた先は、最初にダニエル達が言っていたとおり、レイファスの組にあてがわれた休憩用の森小屋であった。中には、休憩用のソファや飲み物、手洗いや寝台なども準備されており、個室もあって、大人数が過ごしやすいように配慮されている。
そこに、知らない獣人の男達が複数控えていなければ、シルフィリアもほほ笑んで彼の言葉を受け取ることができたであろう。
あからさまに彼女の来訪を待っていたと思しき男たちの様子に、シルフィリアはダニエルとデニスを睨みつける。
「どういうことです」
「ここまで来て、まだわかりませんか?」
「わかりません。何故、レイファス殿下を裏切ったのです」
「それを、レイファス殿下に国を滅ぼされたあなたが言うとは、意外ですね」
カッと顔を赤らめたシルフィリアに、男達は下卑た笑いを浮かべた。
改めて周囲を見渡すと、この場に居るのは、ダニエルとデニス。
そして、何らかの肉食獣の化身と思しき男が六人居るのが見てとれた。
背後には小屋の扉があり、両手は二人のレイファスの側近に掴まれて動かすことはできない。
「あの人に何をしたの。どうして……」
「おや、自分の心配より、レイファス殿下の心配ですか」
「これはもう、第四王子にやられているんじゃないか」
「いや、実際見てみるまでわからないぞ」
「試してみれば問題ないさ。あの方の言うとおりにしろ」
その会話を聞いて、シルフィリアはピクリと目を見開く。
彼らがシルフィリアを連れてきて、確かめたいこと。
それを指示した者の存在。
レイファスという、ラグナ王国の王子に反旗を翻したにも関わらず、この場に居る男達には余裕が垣間見える。
特に、ダニエルと、デニス。
ラグナ王国の貴族である彼らが、レイファスを裏切って、平然としていられるその理由。