亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~
7章 裏切り

 鹿狩りでは結局、レイファスは途中離脱したものの、三位に食い込むという偉業をなした。

 一位と二位は冒険者達の組で、他の王子達は上位にかすりもしていない。

 なお、表彰の際、レイファスが姿を現さないことに、ラザックは大変機嫌を損ねていて、祝杯が始まり、ラザックが姿を消すまで、周囲は戦々恐々としていたらしい。

 レイファスが倒れた件については、鹿の討伐数が十を超えそうな弟に嫉妬した第一王子ライアスが、香木を使って弟を邪魔したという内容でラザックに報告された。ライアスはもちろん失格である。

 王太子がこのような不祥事を起こしてよいものか、シルフィリアには理解しがたいところであったけれども、よく考えると普段からラグナ王国の王族は奔放にふるまい、惨憺たる風聞が舞っている。
 今更、大会の規則違反による失格処分という汚名が一つ加わったところで、彼らは気にも止めないだろうと納得した。


 -◇-◆-◇-◆-

 鹿狩りの後、シルフィリアとレイファスの関係は大きく変わった。

 二人は相変わらず閨を共にせず、あれ以降触れ合うこともなかったが、間に漂う空気は甘く、距離があまりにも近い。

 その不思議な一体感に、動揺しているのは本人達ではなく、周りの方であった。
 レイファスとシルフィリアの生還を泣いて喜んでくれたアリアも、二人のあまりの変わりように、目を丸くしている。

 けれども、シルフィリアは何も言わなかった。
 二人の関係は、何かあればすぐに壊れてしまう、脆く儚いものだと知っていたからだ。
 口に出すだけで消えてなくなってしまいそうな、今ひと時だけの、夢のようなもの。


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