亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~

「今夜が峠です。ただ、おそらく……」

 シルフィリアは、茫然としながら、主治医の言葉を聞いていた。

 結局、シルフィリアの治癒の力は、彼女の体を治した後、発動することはなかった。
 その理由は、シルフィリアにはわからない。
 黒髪眼鏡の男は、呼んでも現れない。

 レイファスの配下によると、セディアス達の取り調べは一通り終わったとのことだった。

 今回の裏で手引きしていたのは、ライアス第一王子。
 レイファスとシルフィリアの関係についての賭けを、彼はまだ諦めていなかったらしい。

 セディアス達は、協力すれば祖国を属国として復興させると唆かされたのだという。
 だから、犯人は、レイファスに国を滅ぼされた者達ばかりだった。
 結局、弟ジルクリフの言うとおり、レイファスの陣営は一枚岩でなかったのだ。

 第三王子ルーカスは、「ライアスに頼まれて男達をレイファスの元に連れて行ったところ、男達が勝手にレイファスを刺したので驚いた」という、傍観者の立場を貫いていた。
 このままレイファスが亡くなれば、誰も意を唱える者は居ないだろう。

 シルフィリアは、決意した。


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