亡国の奴隷姫と独裁国家の狼王子 ~処刑寸前に仇の王子の奴隷に落とされました~
9章 嘘つき狼

 レイファスは、ラグナ王国の第四王子としてその生を受けた。

 父は国王ラザック=ヴィオ=ラグナ。
 獅子の化身たる、おそらく歴代最強の王。

 母はニコラ=ニルヴァーク。
 レイファスを産んだことでラグナ王国第四王妃となった、蛇の化身の獣人である。

 母ニコラにとって、レイファスを産んだことはおそらく災難だっただろうと、レイファスは子どもの頃から思っていた。

 獣人の国であるラグナ王国では、強い雄が王となり、その子を産んだ者が王妃となる。
 ニコラは、ラザックの妾の一人に過ぎなかった。
 それも元々、美しく珍しい生き物として、無理に奪われ、手中に収められたに過ぎない存在だった。

 爬虫類は、他の獣人とは違う。

 人族から見れば変わらないかもしれないが、獅子と蛇蜥蜴は同列にしてよいものではないのだ。
 ラグナ王国の矜持。他者を圧倒し、鬣を翻し、獲物を狩る美しさを誇るそれは、絡めとるようなやり方を好まない。
 それ故に、ラグナ王国では、爬虫類族は人族ほどではないものの忌避されがちであった。

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